6/25/2008

きてます、キテマス…

一時はやった、「ハンドパワー」を行う時の名台詞である。

マジックとトリック。つまり自らの手わざと存在するものを混合させ、摩訶不思議な体験(魔法にちかいもの)を提供してくれる、すばらしい阿父が15年程前にいたことを思い出した(今でもしばしTVにてご活躍中)。

昨日、オーストリアの作家Erwin Wurmのプレス用内覧会がモスクワ・アーティストセンターで開催されたので鑑賞に行った。
入り口正面に、ヨガの達人(名前失念)が念力で曲げたというVWGのワゴン車が展示(左)。しかもバックミュージックにレッド・ホット・チリ・ペッパーズの《Can't stop》が流れている。パッと見、かなり期待できそうという雰囲気を漂わせる。
これまた、前情報を蓄えていかなかったので、知識をフル動員させて理解に努めようとしたところ、アーティスト自身が解説するツアーが開催されたので、それに参加。


解説によれば、展示作品は「まじめ」ないし「普通」のものが角度を変えて提供されている。それによって我々の「時代精神」(「der Zeit Geist」とドイツ語で言っていたので間違いのない訳)を表明されているとのこと。
展示作品を見てみると、上記のワゴン車や「アドルノ」と名づけられた人体を模写しつつもペチャンコに潰れた彫刻作品(右上)、ドリフト状態に保たれて展示される自動車、始終片腕を挙げて皿を保ち続けて生活する人の一日を取ったビデオ作品(右下)、重力に逆らうような空間構成(下から上へ水が流れたり、平面なのに物体が横滑りする)映像等。見飽きない作品が多かった。

角度を変える、ないしは一つ手を加えてみる。
このことによって形而上学的に表明しえなかった世界が、これほどにも簡単に面白くしかも奇異に表象し得るとはなんとも愉快。
あと羨ましく思ったのが、このアーティストを支えるパトロンの存在。彼の大方はグッゲンハイムがコレクションしているのだけれど、ドイツ語圏で最大のKunsthalleのキュレーターがわざわざ来露して延々Wrum氏の作品を解説(30分ぐらい)。
日本だと作家によって、他人からの解説を拒む人を見かけるけど、それはこうした支援者と制作者の信頼関係が熟成されてないからなんじゃないかと感じた。
まぁ久々に面白い展示を見せてもらい、Wurm氏に感謝!

6/19/2008

『あらゆる場所に花束が…』

っていうタイトルの文学作品があった気がする。

確か、中原昌也(暴力温泉芸者)がこのタイトルで文学賞を取っていたような…
それで思い出したのが、彼のノイズミュージック。

モスクワの音楽シーンでノイズミュージックに人気が集まってきている。

先日、見に行ったアウクツィオーンも厳密なカテゴリーではこの分野に属さない。だが、まぁやかましさという点でも組み入れられるだろうし、生演奏だけど音の構成が非常に緻密かつ意図的に騒音というか音量をうるさくしているという点でも広義でこれに属する。
そんなこともあって意外とモスクワ連中にノイズミュージックの受けがいい。

で、話が飛ぶんだが、昨日カールステン・ニコライ(ドイツ:左の兄ちゃん)の単独講義(講演)がモスクワで開催された。

YCAM(山口情報芸術センター)で作品展示があったと、とある人から聞いていたので、てっきりコンテンポラリー・アーティストだと勘違いしていた。だから講義が始まるまで、人だかりに驚く。

コンテンポラリーアートも人気あるんだなーと思っていたが、講義を聴き(英→露)作品を拝見して、「ノイズ系ね」と人の集まりを妙に納得。

厳密には「インスタレーションを中心とした音を用いた作品を多く手がける」んだけど、CDとか確か坂本龍一とコラボもしていたりする。
ノイズミュージックには、私はもちろん精通しておりません。
だが、この講義で提示していた彼の作品はテレビの走査線を解析して映像とその映像から紡ぎ出される騒音から成る。だからといってうるさいと感じるよりは、緻密さを感じる。こういってよければ心地好い。
で話は戻って、中原昌也。
彼の本を読んだんだけど、文学批評のできない私としては、何とも難しい。読売新聞の対談で蓮実重彦(映画・文芸批評家)が「あなたはカフカだ!」って絶賛していたけど、なんというか非常に刹那的。いい意味でも悪い意味でも先が読めない。これって彼の音楽(Hair stylistics)にも通底する要素で、やっぱそこはノイズ・ミュージックだからなのか?いやぁ、研究の余地ありですな。音楽評論家ないし表象文化専攻の皆さん。
そういう線上に「楽しさ」を求める自分は、破壊的衝動があるのかも…
最近、論文で文章構成のことばかり考えて一日を過ごすからなのか?

6/03/2008

俺はネップマン

Нэпман」という唄がある。

いつだか、寮に遊びに来たロシア人学生に「ロシアのバンドでどんなんがお勧め?」と尋ねたところ、「アウクツィオーン аукцЫон(下)以外 、私は認めない」と言われたので、早速購入し拝聴。

まぁ悪くない。強いて言えば、デヴィット・ボウイとNo smoking orchestraのようなジプシーミュージックを足して2で割った感じかな。

80年代半ばからレニングラード(現サンクト・ペテルブルグ)で活動を始め、現在まで活躍している。昨年はNYでジョン・メデスキーらと録音した「Девушки Поют 」をリリースし、幸運なことにここモスクワで先日(5/30)にライヴを行うとのことで、見に行ってきた。


このグループの中心メンバーはレオニード・フョードロフ(v,g,per:右)とオレーク・ガルーシャ(v,per:左)。フョードロフはソロ活動も行っており、ロシアではかなり実力のある歌手として知られているようだ。

もう彼らは40代後半なんで、1曲目が終わるとかなりグッタリ。とはいえ、ハイテンションのまま二時間が終了。最前列で見ていた私もなぜかハイテンションになりグッタリ。

MCが途中で入るんだが、曲の勢いそのままでガルーシャが詩を朗読。プーシキン、マヤコフスキイとまぁロシアでは有名な詩人(ロシア人は小学校で暗記させられる)をチョイスしてくるところが、さすがエンターテイナーといったところか。

ちなみに下はフョードロフとガルーシャが曲の間奏の際に詩を朗読する場面。
40代はどの国でも元気がありますな!見習わないと。